フライパンで肉を焼くと水浸しになるのはなぜ?「焼く」が「煮る」に変わる原因と道具の選び方|おすすめフライパン5選

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ステーキや焼肉、肉野菜炒めを作っていると、いつの間にかフライパンの中が水浸しになっていた経験はないでしょうか。

最初は「ジュージュー」と焼けていたはずなのに、途中から「グツグツ」という音に変わり、肉の表面には焼き色がつかない。それなのに中まで火が入り、食べる頃には硬くなっている。

せっかく少し奮発して買った肉が水っぽくなると、肉そのものが悪かったように感じるかもしれません。

しかし、フライパンが水浸しになる原因は、肉の値段や品質だけではありません。

肉の表面に残った水分、一度に焼く量、フライパンの予熱不足、野菜や調味料を入れる順番など、家庭でのちょっとした焼き方が大きく関係しています。

私は食品スーパーの精肉部門で約25年働き、5社の売場で牛肉・豚肉・鶏肉の加工や販売に携わってきました。試食販売などで実際に肉を焼いていると、同じ肉でも焼く量や道具によって、仕上がりが驚くほど変わります。

この記事では、肉を焼くとフライパンが水浸しになる原因と、「煮る」状態にしない焼き方、家庭で使いやすいフライパンの選び方まで分かりやすく解説します。

  1. フライパンで肉を焼くと水浸しになるのはなぜ?最初に結論
    1. 肉から出た水分を蒸発させる熱が足りていない
    2. 「焼く」と「煮る」の違いは肉の表面温度にある
    3. 少し肉汁が出ただけなら失敗ではない
  2. 肉を焼いたフライパンが水浸しになる7つの原因
    1. 冷凍肉の解凍が不十分でドリップが残っている
    2. 肉の表面を拭かずに焼いている
    3. 肉を一度に入れすぎている
    4. フライパンの予熱が足りていない
    5. 弱火のまま何度も肉を動かしている
    6. ふたをするタイミングが早すぎる
    7. 野菜や調味料を早く入れすぎている
  3. 肉を水浸しにしにくいおすすめフライパン5選
    1. リバーライト 極JAPAN フライパン26cm
    2. ビタクラフト スーパー鉄 フライパン26cm
    3. バーミキュラ フライパン26cm
    4. ティファール IHチタン・エクセレンス モカ フライパン26cm
    5. ジオ・プロダクト ソテーパン25cm
  4. 「焼く」が「煮る」に変わる仕組みをやさしく解説
    1. 香ばしい焼き色はメイラード反応で生まれる
    2. 水分がたまると表面温度が上がりにくい
    3. 焼き色がつかないまま肉が硬くなる理由
    4. 途中で水を捨てるだけでは根本的な解決にならない
  5. 肉を水っぽくしない焼き方|家庭でできる7つの手順
    1. 肉は中まで解凍してから焼く
    2. ドリップと表面の水分をキッチンペーパーで拭く
    3. 肉を並べたときに隙間ができる量に分ける
    4. フライパンを予熱してから油と肉を入れる
    5. 肉を入れた直後は動かさない
    6. 野菜と肉は別々に焼いて最後に合わせる
    7. 塩やたれは肉と料理に合わせて入れる
  6. 料理と肉の厚さで変わる水浸し対策
    1. ステーキは広い焼き面をしっかり密着させる
    2. 焼肉用・牛こま切れ・切り落としは小分けにして焼く
    3. 肉野菜炒めは肉を取り出してから野菜を炒める
    4. ひき肉は最初から細かくほぐしすぎない
    5. 豚肉と鶏肉は焼き色だけで加熱完了を判断しない
  7. 肉を水浸しにしにくいフライパンと道具の選び方
    1. フライパンは肉を詰め込まずに並べられる大きさを選ぶ
    2. 鉄製フライパンは高温を保ちやすく焼き色をつけやすい
    3. ステンレス製は蓄熱性が高いが予熱にコツがいる
    4. フッ素加工は扱いやすいが強すぎる空焼きに注意する
    5. 薄すぎるフライパンは肉を入れたときに温度が下がりやすい
    6. トング・キッチンペーパー・肉用温度計も役に立つ
  8. まとめ|肉を水浸しにしないコツは「水分・量・温度」の3つ
    1. 焼く前に肉の表面の水分を取る
    2. 一度に焼きすぎずフライパンの温度を保つ
    3. 料理に合ったフライパンと焼く順番を選ぶ

フライパンで肉を焼くと水浸しになるのはなぜ?最初に結論

肉を焼くとフライパンが水浸しになる状態と香ばしく焼けた状態

肉を焼いたフライパンが水浸しになるのは、肉から出た水分を蒸発させるだけの熱が足りていないからです。

肉から水分が出ること自体は珍しくありません。肉にはもともと多くの水分が含まれており、加熱すると筋肉をつくるたんぱく質が縮み、内部の水分が押し出されます。

問題は、出てきた水分をフライパンの熱で素早く蒸発させられるかどうかです。

肉から出た水分を蒸発させる熱が足りていない

十分に予熱されたフライパンへ適量の肉を入れると、肉の表面にある水分は蒸気となって逃げていきます。そのため、フライパンの底へ大量の水がたまりにくく、肉の表面には香ばしい焼き色がつきます。

ところが、冷たい肉をたくさん入れると、フライパンの温度は一気に下がります。

温度が下がった状態では水分の蒸発が追いつきません。肉から出た水分が底へたまり、その水分によってフライパンの温度がさらに上がりにくくなる、という悪循環が起こります。

家庭用コンロは、業務用の強い火力と比べると、下がったフライパンの温度を戻すまでに時間がかかります。

「強火にしているのに水がたまる」というときは、火力そのものより、肉を入れすぎていないかを確認してみてください。

「焼く」と「煮る」の違いは肉の表面温度にある

肉を香ばしく焼くには、肉の表面から余分な水分をなくし、焼き色がつく温度まで上げる必要があります。

フライパンの底に水がたまった状態では、肉の表面が水や蒸気に囲まれます。すると、高温で焼き付けるというより、湯や蒸気で肉を加熱する状態に近づきます。

これが、家庭のフライパンで「焼く」が「煮る」に変わる正体です。

煮る状態になっても、肉の内部には熱が入っていきます。しかし、香ばしい焼き色がつかないため、肉らしい香りが弱くなります。

そのまま水分がなくなるまで加熱を続ければ、今度は肉の内部に火が入りすぎ、硬くなりやすいのです。

少し肉汁が出ただけなら失敗ではない

焼いている肉の周囲に少し透明な肉汁が出る程度なら、すぐに失敗と考える必要はありません。

厚いステーキや鶏もも肉、脂の多い豚肉などは、加熱中に水分や脂が出ます。脂と水分が混ざっている場合もあるため、フライパンに液体が見えたからといって、すべてがドリップとは限りません。

注意したいのは、肉の下半分が浸かるほど水がたまり、焼く音が「ジュージュー」から「グツグツ」に変わったときです。

肉を持ち上げても焼き色がほとんどなく、表面が灰色になっている場合も、煮る状態に近づいています。

少量の肉汁なら慌てず、そのまま焼き面を作ります。明らかに水がたまっているなら、次に焼く分から肉の量や予熱を見直しましょう。

肉を焼いたフライパンが水浸しになる7つの原因

肉を詰め込みすぎたフライパンに水分がたまる様子

フライパンが水浸しになる原因は一つではありません。

特に家庭では、解凍、予熱、肉の量、野菜、調味料という複数の要因が重なっていることが多いです。

冷凍肉の解凍が不十分でドリップが残っている

冷凍肉の中心がまだ凍っている状態で焼くと、表面は熱くなっても、内部の氷が溶けながら水分が出てきます。

反対に、電子レンジなどで急いで解凍し、一部だけ温まった肉もドリップが増えやすくなります。

おすすめは、冷凍庫から冷蔵庫へ移し、時間をかけて解凍する方法です。肉の厚さや量によって必要な時間は変わるため、翌日に使う肉なら前日のうちに冷蔵庫へ移しておくと安心です。

パックの底へ赤い液体がたまっていたら、そのままフライパンへ入れないでください。

赤い液体は血だけではなく、肉の水分に色素たんぱく質などが混ざったドリップです。ドリップが多い肉は臭いも出やすいため、キッチンペーパーで軽く拭き取ってから焼きましょう。

肉の表面を拭かずに焼いている

冷凍肉でなくても、肉の表面には水分が付着しています。

パックから出した牛肉、下味用の液体に漬けた豚肉、洗った後の鶏肉などを濡れたまま焼けば、その水分がフライパンへ入ります。

焼く直前に、新しいキッチンペーパーで肉の表と裏を軽く押さえてください。

力を入れて肉をつぶす必要はありません。表面に光っている水分を取るだけでも、焼き色のつき方が変わります。

精肉売場でも、肉の表面状態は見た目や日持ちに影響します。水分が多い状態を放置すると肉の色がくすみ、においも出やすくなるため、売場ではドリップの扱いにかなり気を使います。

家庭で焼くときも、最初に水分を取り除くことが大切です。

肉を一度に入れすぎている

家庭で最も多いと感じるのが、肉の入れすぎです。

家族4人分の肉を一度に焼きたくなる気持ちはよく分かります。洗い物を増やしたくありませんし、2回に分けるより早く終わりそうに思えます。

しかし、フライパンの底が見えなくなるほど肉を詰め込むと、熱が肉に奪われて温度が急激に下がります。

さらに、肉同士の隙間がないため、発生した蒸気が逃げにくくなります。蒸気が肉の表面で水滴に戻り、フライパンへ落ちるため、水浸しになりやすいのです。

肉は重ねず、肉同士の間からフライパンの底が見える程度に並べてください。

一度に全部焼くより、半量ずつ2回に分けたほうが短時間で焼き色がつき、結果としておいしく仕上がります。

フライパンの予熱が足りていない

フライパンをコンロへ置き、すぐに肉を入れていないでしょうか。

予熱が足りないフライパンへ肉を入れると、肉の温度と水分によって、さらに温度が下がります。温度が上がるまでの間に肉から水分が流れ出し、焼き色がつく前に煮る状態になります。

ただし、すべてのフライパンを煙が出るまで加熱すればよいわけではありません。

鉄やステンレスは予熱が重要ですが、フッ素樹脂加工のフライパンを空のまま強火で長時間加熱するのは避ける必要があります。

使っているフライパンの材質を確認し、取扱説明書に合った範囲で予熱してください。

弱火のまま何度も肉を動かしている

焦げるのが心配で、肉を入れた直後から菜箸で動かしたり、何度も裏返したりする人も多いと思います。

しかし、肉を入れた直後は表面に焼き面を作る大切な時間です。

何度も動かすとフライパンへ密着する時間が短くなり、焼き色がつきません。肉から水分だけが出続け、白っぽい仕上がりになります。

薄切り肉を炒める場合でも、最初から細かくかき混ぜるのではなく、フライパンへ広げたら少し待ちます。底面に焼き色がついてから裏返したり、ほぐしたりしましょう。

ふたをするタイミングが早すぎる

厚い肉へ火を通そうとして、肉を入れた直後からふたをすると、フライパンの中に蒸気がこもります。

蒸気はふたの内側で冷やされ、水滴になってフライパンへ戻ります。これでは焼くというより、蒸し焼きです。

蒸し焼きが悪いわけではありません。ハンバーグや厚い鶏肉へ中まで火を通すには有効な方法です。

問題は、焼き色をつける前からふたをすることです。

まずはふたをせずに肉の表面を焼き、焼き色がついてから必要に応じてふたを使いましょう。仕上げにふたを外して水分を飛ばすことも大切です。

野菜や調味料を早く入れすぎている

肉野菜炒めが水っぽくなる場合、肉だけでなく野菜も原因になります。

もやし、キャベツ、白菜、玉ねぎ、きのこ類などは、加熱すると多くの水分が出ます。肉と野菜を最初から一緒に入れると、フライパンの温度が下がり、肉の水分と野菜の水分が一度にたまります。

焼肉のたれ、しょうゆ、酒、みりんなどの液体調味料も同じです。

肉へ焼き色がつく前にたれを入れると、水分が蒸発するまで肉の表面温度が上がりません。その間に肉へ火が入り、硬くなってしまいます。

塩も、振ってから中途半端な時間を置くと、肉の表面に水分が浮いてきます。薄切り肉なら焼く直前、厚いステーキなら調理方法に合わせてタイミングを決めましょう。

肉を水浸しにしにくいおすすめフライパン5選

肉を焼くのに適した5種類のフライパン

フライパンを替えただけで、すべての問題が解決するわけではありません。

どれほど高価なフライパンでも、冷たい肉を隙間なく並べれば温度は下がります。それでも、肉を入れたときに温度が下がりにくく、底面を広く使えるフライパンは、焼き色をつけやすいのも事実です。

ここでは、材質や価格、手入れのしやすさが異なる5商品を選びました。

リバーライト 極JAPAN フライパン26cm

鉄フライパンで肉を香ばしく焼きたい人に、まず候補にしてほしい商品です。

26cmタイプは重量約950g、底面直径約17.5cm、底の厚さは約1.6mm。ガス火とIHの両方に対応しています。

特殊な熱処理を施した鉄を使用しており、一般的な鉄フライパンよりさびにくいのが特徴です。使用前の大がかりな空焼きは不要ですが、使い始めの油ならしと調理前の油返しは行ったほうが使いやすくなります。

肉を入れたときの温度回復が早く、ステーキ、豚のしょうが焼き、焼肉用の肉などにしっかり焼き色をつけられます。

一方、コーティング加工のフライパンと同じ感覚で使うと、予熱不足で肉がくっつくことがあります。少し手間をかけても、長く育てながら使いたい人向けです。リバーライト公式情報

ビタクラフト スーパー鉄 フライパン26cm

「鉄フライパンに興味はあるけれど、さびや手入れが心配」という人に向いています。

独自の窒化加工が施され、さびにくさと丈夫さを両立しています。26cmタイプは内径約26cm、底径約20.5cm、板厚約1.6mm、重量約963gです。

底面が比較的広いため、ステーキだけでなく、複数枚の豚肉や牛切り落としを広げて焼きたいときにも使いやすいでしょう。

購入後の焼き入れや、使用後に毎回油を塗る作業が不要と案内されているため、従来型の鉄フライパンより取り入れやすい商品です。

ただし、こびりつきを防ぐには予熱と油が必要です。手入れが簡単だからといって、冷たい状態から肉を焼き始めないようにしましょう。ビタクラフト公式商品ページ

バーミキュラ フライパン26cm

肉や野菜から出る余分な水分を飛ばし、香ばしく仕上げることを重視したい人に向いています。

鋳物ホーロー製で、鉄の蓄熱性とホーロー加工を組み合わせたフライパンです。肉を焼くほか、野菜炒めやひき肉料理でも、水分を飛ばしながら焼き付けたい場面で活躍します。

特に、肉野菜炒めがいつも水っぽくなる人には相性のよい選択肢です。

ただし、一般的なアルミ製フライパンより重く、価格も高めです。調理中にフライパンを何度も振りたい人や、軽さを最優先したい人には負担になるかもしれません。

無理にあおらず、コンロへ置いたまま食材を焼き付ける使い方が合っています。バーミキュラ公式商品情報

ティファール IHチタン・エクセレンス モカ フライパン26cm

鉄フライパンの手入れに自信がなく、普段使いしやすい一枚を探している人に向いています。

本体はアルミニウム合金で、底面にステンレス鋼を組み合わせています。内径は約26cm、重量は約950gで、ガス火とIHに対応しています。

中央のお知らせマークによって予熱のタイミングを確認しやすく、フライパンを十分に温めてから肉を入れる習慣をつけやすいのが利点です。

フッ素樹脂加工なので肉がくっつきにくく、調理後の手入れも簡単です。鉄製ほど強い高温調理には向きませんが、薄切り肉、豚肉、鶏肉、ハンバーグなどを日常的に焼くには扱いやすいでしょう。

空の状態で強火にかけ続けたり、金属製の道具で表面を傷つけたりしないよう注意してください。ティファール公式商品ページ

ジオ・プロダクト ソテーパン25cm

ステンレス製のフライパンを育てながら長く使いたい人に向いています。

内側のステンレスとアルミニウムなどを組み合わせた全面7層構造で、フライパン全体へ熱を伝えやすい設計です。25cmタイプは容量約2.5Lで、焼く、炒める、煮るといった幅広い調理に使えます。

肉の表面を焼いた後、そのままソースや煮込み料理へつなげられるのが便利です。ステーキを焼いた後に、フライパンへ残った肉のうま味を利用してソースを作りたい人にも合います。

一方、25cmタイプは約1,920gあるため、軽いフライパンを探している人には向きません。また、表面加工がないので、予熱が足りないと肉がくっつきます。

重さと予熱のコツを受け入れられるなら、家庭で長く使える丈夫な一枚です。宮﨑製作所公式商品ページ

「焼く」が「煮る」に変わる仕組みをやさしく解説

水分で煮えた肉と香ばしく焼けた肉の違い

「水が出ると、どうして焼き色がつかないのか」と疑問に思う人もいるでしょう。

ここでは少しだけ、温度と焼き色の仕組みを説明します。仕組みが分かると、レシピに書かれた火力だけに頼らず、自分で調整できるようになります。

香ばしい焼き色はメイラード反応で生まれる

肉を焼いたときの茶色い焼き色や香ばしい香りには、肉に含まれるアミノ酸と糖が熱によって反応する「メイラード反応」が関係しています。

難しい言葉ですが、家庭料理では「肉の表面が乾き、高温になると、おいしそうな色と香りが生まれる」と考えれば十分です。

肉へ焼き色をつけることは、見た目をよくするだけではありません。

ゆでた肉と焼いた肉では、同じ部位でも香りや味の印象が違います。焼き色のある肉を口へ入れたときに感じる香ばしさが、「肉を食べている」という満足感につながります。

水分がたまると表面温度が上がりにくい

水分が残っている間は、その水分を蒸発させるために熱が使われます。

肉の表面が濡れていたり、フライパンに水がたまっていたりすると、肉の表面は焼き色がつく温度まで上がりにくくなります。

フライパンの火を強くしているのに肉が茶色くならないのは、熱が弱いというより、熱が水分を蒸発させるために使われているからです。

水がなくなれば焼き色はつき始めますが、その頃には肉の内部まで加熱が進んでいることがあります。

だからこそ、焼き始める前に余計な水分を減らすことが重要です。

焼き色がつかないまま肉が硬くなる理由

肉は加熱すると、筋肉をつくるたんぱく質が変化して縮みます。

焼き色を待ちながら長く加熱すると、肉の内部からさらに水分が押し出されます。表面は香ばしくないのに、中身だけが締まって硬くなるのはこのためです。

特に、牛もも肉、豚もも肉、鶏むね肉など、脂肪が少ない部位は加熱しすぎの影響を受けやすいです。

脂が少ない肉ほど、短時間で表面を焼き、必要以上に加熱を続けないことが大切です。

牛ももステーキが硬くなりやすい理由は、関連記事の牛ももステーキがパサパサになる3つの原因でも詳しく解説しています。

途中で水を捨てるだけでは根本的な解決にならない

フライパンにたまった水を途中で捨てれば、焼き色をつけ直すことはできます。

ただし、水を捨てるまで加熱した肉には、すでにかなり火が入っています。その後に強火で焼き直すと、表面へ色がつく頃には中が硬くなっているかもしれません。

水を捨てる方法は、今焼いている肉を立て直す応急処置です。

根本的な対策は、次に焼くときに表面の水分を拭き、肉の量を減らし、十分に予熱することです。

肉野菜炒めの場合は、たまった水を捨てると、調味料や肉の風味まで一緒に流れてしまいます。最初から水を出しにくい順番で焼いたほうが、味もぼやけません。

肉を水っぽくしない焼き方|家庭でできる7つの手順

肉の水分を拭いて適量ずつフライパンで焼く準備

ここからは、特別な技術がなくても実践できる焼き方を順番に紹介します。

すべてを一度に変えるのが大変なら、まずは「表面を拭く」「肉を入れすぎない」「予熱する」の3つから始めてください。

肉は中まで解凍してから焼く

冷凍肉は、冷蔵庫でゆっくり解凍するのが基本です。

薄切り肉なら半日ほど、厚い肉や大きなブロック肉なら、さらに時間が必要になることがあります。使用する前日に冷蔵庫へ移しておくと、慌てずに済みます。

解凍するときは、パックや保存袋を皿やバットにのせてください。袋から液体が漏れても、ほかの食品へ付着するのを防げます。

急いでいるときに電子レンジの解凍機能を使う場合は、一部だけ加熱されないよう、短い時間で状態を確認しながら進めましょう。

肉を押したときに中心だけ硬い、薄切り肉同士が凍ってはがれないという状態なら、まだ解凍不足です。

ドリップと表面の水分をキッチンペーパーで拭く

解凍した肉をパックから取り出したら、清潔なキッチンペーパーで表面を押さえます。

ドリップを吸ったペーパーで調理台やほかの食材を拭かないようにしてください。特に鶏肉や豚肉を扱ったペーパーは、すぐに処分しましょう。

下味用のたれに漬けた肉も、液体が多く付着したまま焼くと煮る状態になります。

味まで拭き取る必要はありませんが、表面からたれが滴り落ちる場合は、軽く液体を切ってからフライパンへ入れます。

残ったたれは、肉に十分な焼き色をつけてから加え、最後に煮絡めると香ばしさを残せます。

肉を並べたときに隙間ができる量に分ける

フライパンへ肉を並べたとき、肉と肉の間から底面が見える程度の余裕を残してください。

26cmのフライパンでも、家族4人分の薄切り肉を一度に焼くのは難しいことがあります。肉の量が多ければ、2回か3回に分けます。

最初に焼いた肉は、清潔な皿やバットへ取り出しておきます。すべて焼き終わったらフライパンへ戻し、調味料と短時間で合わせれば、温かい状態で仕上げられます。

私も試食販売などで大量の肉を焼くとき、一度に焼けるだけ焼きたくなることがありました。

しかし、無理に詰め込むと焼き時間が長くなり、見た目も味も悪くなります。少し面倒でも小分けにしたほうが、結果として早く仕上がりました。

フライパンを予熱してから油と肉を入れる

予熱方法は、フライパンの材質によって変えます。

鉄製なら中火で温め、油を入れて全体になじませます。鉄フライパンに慣れていない人は、少し多めの油を温めてから余分な油を戻す「油返し」を行うと、肉がくっつきにくくなります。

ステンレス製も予熱が重要です。十分に温めてから油を入れ、油がなめらかに広がる状態を確認して肉を入れます。

フッ素樹脂加工は、空のまま強火で長時間加熱しません。中火程度で短く予熱し、油を入れてから肉を焼きます。

肉を入れた瞬間に「ジュッ」と音がすることが一つの目安です。ただし、油から激しく煙が出るほど加熱する必要はありません。

肉を入れた直後は動かさない

肉を入れたら、焼き面ができるまで少し待ちます。

ステーキならフライパンへ広い面を密着させ、薄切り肉なら重ならないように広げます。肉が反り返る場合は、トングで短時間だけ軽く押さえてもよいでしょう。

何秒焼けばよいかは、肉の厚さ、温度、フライパンによって変わります。

時間だけで判断せず、肉の端を少し持ち上げて焼き色を確認してください。きれいな茶色になり、フライパンからはがれやすくなっていれば、裏返すタイミングです。

肉を強く押し続けると、内部の肉汁が流れ出しやすくなります。密着させるために軽く押さえるのと、力を入れて肉汁を絞り出すのは別です。

野菜と肉は別々に焼いて最後に合わせる

肉野菜炒めを水っぽくしない一番確実な方法は、肉と野菜を別々に加熱することです。

まず肉を少量ずつ焼き、表面に焼き色がついたら皿へ取り出します。

次にフライパンの余分な水分や焦げを軽く整え、野菜を炒めます。野菜も入れすぎると水が出るため、量が多い場合は分けてください。

野菜へ火が通ったら肉を戻し、最後に調味料を加えて短時間で混ぜ合わせます。

肉を取り出すひと手間は増えますが、肉の焼き色と野菜の食感を両立できます。水分が少ないため、たれも薄まらず、少ない調味料で味が決まります。

塩やたれは肉と料理に合わせて入れる

薄切り肉へ塩を振るなら、基本的には焼く直前が扱いやすいです。

塩を振ったまま数分から十数分置くと、肉の表面に水分が浮くことがあります。その状態で焼くなら、表面の水分を軽く押さえてください。

厚いステーキでは、焼く直前に塩を振る方法のほか、十分前に塩を振って肉へなじませる方法もあります。避けたいのは、表面に水が浮き始めた中途半端な状態で焼くことです。

しょうゆ、焼肉のたれ、酒、みりんなどは、肉へ焼き色をつけてから加えます。

砂糖を含むたれは焦げやすいため、最後に加えて短時間で煮絡めると、肉を硬くしにくくなります。

料理と肉の厚さで変わる水浸し対策

ステーキや薄切り肉など種類に合わせた焼き方

同じ肉でも、ステーキ、焼肉、野菜炒めでは適した焼き方が違います。

何でも強火にすればよいわけではありません。肉の厚さと料理に合わせ、焼き色をつける工程と中まで火を通す工程を分けて考えましょう。

ステーキは広い焼き面をしっかり密着させる

ステーキは、肉の広い面をフライパンへ密着させることが大切です。

表面の水分を拭き、十分に予熱したフライパンへ一枚ずつ入れます。二枚並べると隙間がほとんどなくなるフライパンなら、無理をせず一枚ずつ焼いてください。

まず表面へ焼き色をつけ、その後に火力を調整して中心へ熱を入れます。

焼き上がった肉をすぐに切ると肉汁が流れ出やすいため、厚いステーキは少し休ませてから切ります。

中心温度を確認したい場合は、温度計を上から刺すより、肉の側面から中心へ向けて刺すと測定位置を外しにくくなります。詳しくは肉用温度計はどこまで刺す?薄いステーキでも中心温度を外さない「横刺し」のコツをご覧ください。

焼肉用・牛こま切れ・切り落としは小分けにして焼く

薄切り肉は火が通りやすい一方、一度に大量に入れやすいのが落とし穴です。

焼肉用の肉は重ならないよう一枚ずつ広げ、片面へ焼き色がついてから裏返します。こま切れや切り落としも、最初から菜箸で細かくほぐし続けないでください。

フライパンへ薄く広げ、下側が焼けてから大きく返し、その後にほぐすと香ばしさが残ります。

牛切り落としが硬くなるときは、水分だけでなく、脂とスジの違いや肉の切り方も関係します。牛切り落としを炒めるとゴムみたいに固い原因も参考にしてください。

肉野菜炒めは肉を取り出してから野菜を炒める

肉野菜炒めでは、最初に肉だけを焼いて取り出します。

その後、火が通りにくい野菜から順番に炒めます。ただし、水分の多い野菜を大量に入れる場合は、野菜も何回かに分けたほうが水っぽくなりません。

野菜へ七〜八割ほど火が通ったところで肉を戻し、たれを加えて仕上げます。

肉と野菜を最初から最後まで一緒に加熱すると、野菜がちょうどよく仕上がる頃には、薄切り肉へ火が入りすぎていることがあります。

別々に焼く方法なら、肉の加熱時間を短くできるため、安価なこま切れ肉でも硬くなりにくいです。

ひき肉は最初から細かくほぐしすぎない

ひき肉をフライパンへ入れた瞬間から細かくほぐすと、肉の温度が下がり、水分が出やすくなります。

まずは大きな塊のまま広げ、フライパンへ押しつけるようにして焼きます。底面に茶色い焼き色がついたら裏返し、その後に料理へ合った大きさへほぐしてください。

そぼろのように細かくしたい料理でも、最初に焼き付ける時間を作ると肉の香りが強くなります。

ミートソースやキーマカレーでも同じです。ひき肉を「炒める」のではなく、最初は「焼く」という意識を持つと、水っぽさを抑えられます。

豚肉と鶏肉は焼き色だけで加熱完了を判断しない

牛ステーキと違い、豚肉や鶏肉は表面に焼き色がついただけで食べ頃とは判断できません。中心まで十分に加熱する必要があります。

厚い豚肉や鶏もも肉は、最初に表面へ焼き色をつけた後、火力を弱めて中心へ熱を入れます。必要に応じて途中からふたを使い、最後にふたを外して表面の水分を飛ばしてください。

肉が厚いほど、中心温度計が役立ちます。

「安全のために」と強火で長く焼き続けると、表面だけが焦げ、中が生のままになることがあります。焼き色をつける火力と、中まで火を通す火力を分けることが大切です。

肉を水浸しにしにくいフライパンと道具の選び方

鉄・ステンレス・フッ素加工のフライパンと肉用調理道具

肉をおいしく焼くために重要なのは、フライパンの価格よりも、焼く量に合った大きさと材質です。

「プロ用」「高級」という言葉だけで選ばず、自宅のコンロ、家族の人数、手入れにかけられる時間を考えて選びましょう。

フライパンは肉を詰め込まずに並べられる大きさを選ぶ

一人分のステーキや少量の肉なら24〜26cm、家族分の薄切り肉や複数枚の豚肉を焼くなら26〜28cmが使いやすい目安です。

ただし、同じ26cmでも、側面の傾斜によって実際に肉を置ける底面の広さが違います。

商品を選ぶときは、上部の直径だけでなく「底径」を確認してください。底面が広いフライパンほど、肉を重ねずに並べやすくなります。

一方、大きすぎるフライパンを小さなコンロで使うと、中央だけが熱くなり、外側まで十分に温まらないことがあります。コンロの火口やIHの加熱範囲との相性も大切です。

鉄製フライパンは高温を保ちやすく焼き色をつけやすい

鉄製フライパンは、肉へ香ばしい焼き色をつけたい人に向いています。

丈夫で高温調理に使いやすく、金属製のトングやヘラを使える製品が多いのも利点です。コーティングの寿命を気にせず、長く使えます。

一方、予熱と油が足りないと肉がくっつきます。使用後に水分を残すとさびる製品もあるため、洗った後は早めに乾かします。

「鉄なら絶対に水が出ない」というわけではありません。大量の肉を入れれば鉄でも温度は下がります。

鉄フライパンの強みを生かすには、適量を守り、予熱してから焼くことが前提です。

ステンレス製は蓄熱性が高いが予熱にコツがいる

ステンレス製フライパンは丈夫で、表面へ焼き色をつけた肉料理に向いています。

肉を焼いた後、フライパンへ残った茶色い焼き付きにワインや水、しょうゆなどを加え、ソースへ利用できるのも魅力です。

ただし、予熱不足だと肉がくっつきやすく、慣れないうちは扱いにくく感じるかもしれません。

フライパンを温め、油をなじませてから肉を入れることが重要です。肉を入れた直後に無理にはがさず、焼き面ができて自然にはがれやすくなるまで待ちましょう。

フッ素加工は扱いやすいが強すぎる空焼きに注意する

フッ素樹脂加工のフライパンは、肉がくっつきにくく、少ない油でも調理しやすいのが長所です。

料理初心者や、毎日の手入れを簡単にしたい人には現実的な選択です。

ただし、強火での長時間の空焼きや、金属製の道具で表面を傷つける使い方は避けます。肉を香ばしくしたいからといって、必要以上に加熱するのはおすすめできません。

コーティングが傷んで肉がくっつくようになったフライパンでは、焼き色をつけにくくなります。表面の状態も定期的に確認しましょう。

薄すぎるフライパンは肉を入れたときに温度が下がりやすい

軽くて薄いフライパンは取り回しやすい反面、冷たい肉を入れたときに温度が下がりやすい傾向があります。

厚みがあり、ある程度重さのあるフライパンは熱を蓄えやすいため、厚いステーキや鶏もも肉を焼くときに有利です。

ただし、重ければ重いほどよいわけではありません。

重すぎて戸棚から出さなくなったり、洗うのが負担になったりすれば、家庭の道具として使いやすいとはいえません。毎日使うなら、片手で安全に持てるかも確認してください。

トング・キッチンペーパー・肉用温度計も役に立つ

肉を水っぽくしないために、フライパン以外の道具も役立ちます。

キッチンペーパーは、焼く前のドリップや表面の水分を取るために欠かせません。

トングは薄切り肉を広げたり、ステーキを返したりするときに便利です。先端が厚すぎず、肉をつかみやすいものを選びましょう。肉へフォークを何度も刺さずに返せる利点もあります。

肉用温度計があれば、見た目だけで判断せず、中心の加熱状態を確認できます。特に厚い豚肉、鶏肉、ローストビーフをよく作る家庭では便利です。

ただし、道具をそろえる前に、肉の表面を拭く、一度に入れすぎない、十分に予熱するという基本を見直してください。

高価なフライパンより、焼く前のキッチンペーパー一枚のほうが効果を実感できる場合もあります。

まとめ|肉を水浸しにしないコツは「水分・量・温度」の3つ

適量の肉を水分をためず香ばしく焼くフライパン

焼く前に肉の表面の水分を取る

肉を焼いたフライパンが水浸しになるのは、肉が安いからとは限りません。

冷凍肉は中まで解凍し、パックのドリップや肉の表面に残った水分をキッチンペーパーで拭き取ってください。

このひと手間だけでも、焼き色のつき方が変わります。

一度に焼きすぎずフライパンの温度を保つ

家族分の肉でも、一度に詰め込まないことが大切です。

肉同士の間からフライパンの底が見える程度に並べ、量が多ければ2回に分けます。

肉を入れた後に火力を上げて立て直そうとするより、最初から量を減らしたほうが失敗しません。

料理に合ったフライパンと焼く順番を選ぶ

鉄、ステンレス、フッ素加工には、それぞれ長所と注意点があります。

どれを選んでも、適切な予熱と焼く量を守ることが基本です。肉野菜炒めなら肉と野菜を別々に焼き、液体調味料は最後に加えましょう。

肉から少し水分が出るのは自然なことです。大切なのは、水分をフライパンへためず、肉の表面へ焼き色をつけること。

「水分・量・温度」の3つを意識すれば、いつものフライパンでも「煮たような肉」から、香ばしく焼けた肉へ近づけます。

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