スーパーでミスジステーキを買って焼いたところ、赤身はやわらかいのに、真ん中の白い部分だけがゴムのように残った経験はないでしょうか。
「この筋は食べても大丈夫なのか」
「高い肉を買ったのに、どうして噛み切れないのか」
「同じパックに入っていたのに、やわらかい肉と硬い肉があるのはなぜか」
初めてミスジを買った人ほど、不良品ではないかと心配になるかもしれません。
結論からいうと、ミスジの真ん中に通っている筋は、基本的に加熱して食べられます。傷んでいるわけでも、加工中に異物が入ったわけでもありません。
ただし、「食べられること」と「ステーキとしてやわらかく噛み切れること」は別です。
筋が細い部分ならほとんど気になりませんが、厚い部分は短時間焼いただけでは硬く残ります。その筋をやわらかくしようとして長く焼けば、今度は周りの赤身までパサパサになってしまいます。
私は食品スーパー5社の精肉部門で約25年間働き、ミスジを含むさまざまな牛肉を整形し、ステーキや焼肉用として加工してきました。
その経験からお伝えしたいのは、ミスジは「どの一枚も同じようにやわらかい肉」ではないということです。
同じミスジでも、切り出された位置、中央の筋の太さ、肉の厚さによって食感が変わります。さらに、焼き方や切り方によっても、硬さの感じ方には大きな差が出ます。
この記事では、ミスジの真ん中にある筋の正体、同じパックでも硬さが違う理由、スーパーでの選び方、筋を気にせず食べる下処理と焼き方を詳しく解説します。
ミスジステーキの真ん中の筋は食べられる?

ミスジステーキの中央を横切る白い筋は、牛肉にもともと付いている筋や腱にあたる部分です。
適切に加熱されていれば、食べても問題ありません。
ただし、真ん中の筋が厚い場合、ステーキのような短時間加熱ではやわらかくなりにくく、口の中に残ることがあります。
無理に飲み込む必要はありません。硬くて噛み切れない場合は、筋の部分だけを皿へ残しても構いません。
真ん中の白い筋は異物ではない
ミスジを初めて見た人は、赤身の中央に太い白線が入っていることに驚くかもしれません。
脂身が入り込んでいるようにも見えますし、場合によってはプラスチックのようなものが挟まっているようにも見えます。
しかし、この白い部分はミスジ本来の特徴です。
ミスジは一枚の肉の中央付近を筋が通っています。加工する段階で混入したものではなく、肉の構造として最初から存在しています。
中央に筋が見えるからといって、傷んでいるわけでも、古い肉というわけでもありません。
私も売場で、お客様から「真ん中に白い板のようなものがあるけれど、食べられますか」と聞かれたことがあります。
見慣れていなければ、不安になるのは当然です。
赤身の中に細かく散っている白い部分は脂であることが多いのですが、中央を一本の帯のように横切る白い部分は、筋である可能性が高くなります。
食べられても簡単に噛み切れるとは限らない
筋は加熱して食べられる部分ですが、ステーキとして焼けば必ずやわらかくなるわけではありません。
牛すじ煮込みを作るときは、水分のある状態で時間をかけて加熱します。一方、ステーキは比較的短時間で焼き上げる料理です。
赤身をおいしく仕上げる加熱時間と、太い筋をやわらかくするために必要な加熱時間は一致しません。
そのため、赤身はちょうどよく焼けているのに、中央の筋だけがゴムのように残ることがあります。
この状態は焼き方の失敗とは限りません。もともと筋が厚い場所だった可能性があります。
「もう少し焼けば筋もやわらかくなる」と考え、さらに加熱したくなるかもしれません。しかし、フライパンで長く焼き続けても、筋より先に赤身から水分が抜けてしまいます。
筋をやわらかくしようとして、肉全体を硬くしてしまうのです。
細い筋はそのまま、太い筋は切って食べる
ミスジの筋が細く、包丁で簡単に切れる程度であれば、筋切りをしてそのまま焼けます。
中央の筋へ数か所切り込みを入れるだけでも、一口の中に長い筋が残りにくくなります。
一方、白い帯が幅広く、触ると板のような硬さを感じる場合は、無理に残す必要はありません。
筋に沿って包丁を入れ、左右の赤身を二つに分ける方法があります。大きな一枚のステーキではなくなりますが、食べやすさは上がります。
高いミスジを買うと、「筋まで全部食べないともったいない」と感じる人もいるでしょう。
しかし、私の本音をいえば、噛み切れない筋を無理に食べる必要はありません。
残したいのは、ミスジの赤身のおいしさや適度な脂です。食感を損なうほど太い筋は、焼く前に外したほうが最後まで気持ちよく食べられます。
ミスジとはどこの部位?やわらかいのに筋がある理由

ミスジは、牛の肩甲骨周辺から取れる部位です。
肩周辺の肉には、よく動かすため硬くなりやすい部分が多くあります。その中でミスジの赤身は比較的きめが細かく、ステーキや焼肉にすると牛肉らしい濃い味を楽しめます。
ところが、赤身の中央には太い筋が通っています。
「やわらかい赤身」と「噛み切りにくい筋」が一枚の中にあることが、ミスジの大きな特徴です。
肩の中では比較的やわらかい赤身を持つ
ミスジは、肩肉の一部として扱われる部位です。
肩周辺には複数の筋肉が集まっており、肉質や筋の入り方はすべて同じではありません。硬く煮込み向きの場所もあれば、ステーキや焼肉として食べやすい場所もあります。
ミスジの赤身部分は、肩周辺の部位の中では比較的きめが細かく、適度なサシが入ることもあります。
そのため、焼肉店では希少部位として提供され、スーパーでも「ミスジステーキ」「ミスジ焼肉用」として販売されています。
ただし、「希少部位」「やわらかい部位」と表示されていても、中央の筋まで赤身と同じやわらかさになるわけではありません。
希少であることと、筋がないことは別です。
赤身の中央を筋が横切っている
ミスジを見ると、白い筋が赤身を左右に分けるように通っています。
肉の端に付いている脂身とは違い、赤身の中央に入り込んでいるため、取り除こうとすると肉が二つに分かれます。
加工する側からすると、この筋を完全に外して大きなステーキを作るのは困難です。
筋を外せば、形の小さな赤身が二つ残ります。そのため、見栄えのする一枚のステーキとして販売するときは、筋を残した状態でカットすることがあります。
筋が残っているから、店が手抜きをしているとは限りません。
ミスジらしい形で商品化しようとすれば、中央の筋も一緒に入ることがあるのです。
一枚の中でも左右で硬さが違うことがある
中央の筋だけでなく、筋を挟んだ左右の赤身にも食感の違いが出ることがあります。
筋繊維の方向や肉の厚さが左右で完全に同じとは限らないからです。
片側はすっと噛み切れるのに、もう片側は少し歯応えがあることもあります。
一枚のミスジステーキを家族で分けたとき、「自分のところだけ硬かった」と感じることがあるのは、このためです。
焼き方が同じでも、食べた場所によって印象が変わります。
ミスジは一枚全体を「やわらかい」「硬い」と決めるより、赤身、中央の筋、肉の端を分けて考えたほうが特徴を理解しやすい肉です。
サシと中央の筋は性質が違う
赤身の中へ細い線や点のように入っている白い部分は、脂であることが多く、一般にサシや霜降りと呼ばれます。
脂は加熱すると溶け、肉のコクや口当たりに影響します。
一方、中央を一本の帯のように横切る白い部分は、脂ではなく筋である可能性が高くなります。
脂だと思って焼いたところ、まったく溶けずに口へ残ったということもあります。
白い部分が脂か筋か分かりにくい場合は、入り方を確認してください。
細かく散っているものは脂、赤身を分断するように太く伸びているものは筋と考えると見分けやすくなります。
牛肉の脂と筋の違いについては、牛切り落としを炒めるとゴムみたいに固い!白い部分が「脂かスジか」を見分ける方法でも詳しく解説しています。
同じパックのミスジでも硬さが違う5つの理由

同じパックに入ったミスジは、同じ部位、同じ価格、同じ消費期限で販売されています。
それでも、すべての肉が同じやわらかさになるとは限りません。
ミスジは切り出す位置によって中央の筋の太さが変わります。肉の厚さや繊維の向き、サシの量にも違いがあります。
焼く前は似ているように見えても、食べたときに差が出やすいのです。
理由1|切り出された位置によって筋の太さが違う
ミスジの中央を通る筋は、端から端まで同じ太さではありません。
細くてほとんど気にならない場所もあれば、厚くしっかりした場所もあります。
一本のミスジを順番にステーキへ切っていけば、筋の細い一枚と太い一枚ができます。
同じ原料から切り出しても、食感は完全に同じにはなりません。
スーパーでは、規定の重量や枚数に合わせてパック詰めします。そのため、筋が細い肉と太い肉が同じパックへ入ることがあります。
精肉担当者がわざと硬い肉を隠しているわけではなく、部位が持つ形の違いによって起こることです。
私もミスジをステーキへ加工するとき、切る場所によって白い筋の見え方が変わるのを何度も見てきました。
筋が細いところだけを集めたくても、一頭から取れる量には限りがあります。商品を作る以上、筋がやや太い場所も含まれます。
だからこそ、買った後に筋の状態を見て、下処理を変えることが大切です。
理由2|筋の中心と端では硬さが違う
白い筋を真正面から厚く横切るようにカットされた肉は、筋の存在を強く感じます。
一方、筋の端を薄くかすめるように切られた肉は、白い部分が見えていても、それほど気にならないことがあります。
見た目の大きさや形が同じでも、白い部分の厚みは同じではありません。
中央の筋が幅広く、全体に白く不透明な一枚は、焼いた後も筋が残りやすい傾向があります。
筋が細く、赤身との境目が薄い一枚は、数か所切り込みを入れるだけで食べやすくなる場合があります。
パックの中で最も白い筋が目立つ肉だけ硬かったなら、切り出された位置の違いが影響した可能性があります。
理由3|肉の厚さと筋繊維の向きが違う
同じパックのミスジでも、一枚ずつ厚さが微妙に違うことがあります。
手切りの商品だけでなく、機械で切った商品でも、原料の形や置き方によって完全に同じ厚さにはならないことがあります。
薄い肉と厚い肉を同時にフライパンへ置き、同じ時間焼けば、薄い肉から先に火が通ります。
厚い肉に合わせて焼き続けると、薄い肉は焼きすぎて硬くなります。
また、筋繊維に沿って噛むのか、筋繊維を断つ方向で噛むのかによっても、歯切れが変わります。
同じ一枚でも、切る方向を変えただけで食べやすくなることがあります。
「一枚目はやわらかかったのに、二枚目は硬かった」という場合、中央の筋だけでなく、厚さや焼き時間も確認してみてください。
理由4|サシの量や肉質には個体差がある
同じミスジという部位でも、すべての牛が同じ肉質ではありません。
サシの量、赤身のきめ、水分の状態などには個体差があります。
サシが適度に入った肉は、加熱したときに口当たりがやわらかく感じられることがあります。一方、赤身が多い肉は、肉らしい味が強い反面、焼きすぎると硬さを感じやすくなります。
ただし、サシが多ければ中央の筋までやわらかくなるわけではありません。
霜降りがきれいな一枚でも、真ん中に太い筋があれば、その部分は口へ残ることがあります。
値段が高い、国産牛である、サシが多いという条件だけでは、中央の筋の食べやすさまでは判断できません。
理由5|解凍状態や焼き方でも差が広がる
冷凍されていたミスジの場合、肉の中心に冷たい部分が残っていると、火の通り方が不均一になります。
一部だけ凍ったまま焼けば、表面は焼けているのに中心は冷たい状態になります。中心まで火を通そうとして長く焼くと、薄い部分や端の赤身が硬くなります。
また、フライパンへ一度に何枚も並べると温度が下がり、肉の表面から水分が出やすくなります。
焼いているつもりでも、肉汁の中で煮るような状態になり、焼き色が付きません。焼き色を付けようとして加熱時間が長くなれば、赤身の水分がさらに抜けます。
硬さの原因がすべて肉にあるとは限りません。
肉の厚さ、解凍状態、フライパンの温度、焼いた時間が重なって、同じパックの中でも食感の差が大きくなることがあります。
スーパーで硬いミスジを避ける選び方

ミスジの筋を完全に避けるのは簡単ではありません。
中央の筋はミスジ本来の特徴だからです。
ただし、筋の太さや肉の厚さを見比べれば、ステーキとして扱いやすいパックを選びやすくなります。
値段やサシの多さだけで決めず、実際に食べる料理を考えながら選びましょう。
中央の白い筋の太さと幅を見る
ステーキとしてそのまま焼きたいなら、中央の白い筋が比較的細いものを選びます。
細い線のように見え、途中で薄くなっているものは、筋切りだけで食べやすくなる可能性があります。
反対に、白い部分が幅広く、赤身を二つに分ける板のように見えるものは、焼く前に切り分けたほうがよいでしょう。
太い筋があるミスジが悪い商品というわけではありません。
煮込みや細切り炒めに使うなら、ステーキほど筋の形を気にせず選べます。価格と用途が合えば、太い筋のミスジを買って調理方法を変えるのも一つの方法です。
パックの表面だけでなく横からも確認する
スーパーの肉は、見栄えを整えて重ねられています。
表面の一枚だけを見ても、下に入っている肉の筋や厚さまでは分かりません。
透明なトレーであれば、売場に置いたまま少し角度を変え、横から厚さを確認してください。
上の肉は筋が細くても、下の肉には太い白線が入っていることがあります。
ただし、商品を裏返したり、指で強く押したりする必要はありません。他のお客様も購入する商品なので、パックを傷めない範囲で確認しましょう。
筋の太さだけでなく、肉の厚さがそろっているかも見ます。
厚さがそろったパックは、同じフライパンで焼き加減を調整しやすくなります。
大きさより厚さがそろっているかを重視する
大きなミスジステーキは見栄えがよく、食卓へ出したときの満足感もあります。
しかし、家庭で焼きやすいのは、極端に厚すぎず、複数枚の厚さがそろった商品です。
大きさの違いより、厚さの違いのほうが焼き時間に影響します。
一枚だけ分厚く、ほかが薄いパックを選ぶ場合は、同時に焼き始めても取り出す時間を変える必要があります。
家族全員分を一度に焼きたい人は、厚さがそろった商品を選んだほうが失敗しにくいでしょう。
太い筋がある肉だけ、あらかじめ小さく切っておく方法もあります。
一枚の大きなステーキにこだわらなければ、焼き加減を合わせやすくなります。
ドリップと肉の表面も確認する
パックの底に赤いドリップが大量にたまっていないかも確認してください。
ドリップが多い肉は、焼いたときにも水分が出やすく、きれいな焼き色が付きにくい場合があります。
肉の表面が乾きすぎていないか、強く押し潰されていないかも見ます。
牛肉の色は、空気への触れ方や照明でも見え方が変わります。色だけで鮮度を断定せず、消費期限、保存温度、ドリップ、表面の状態を合わせて判断しましょう。
買った後は長時間持ち歩かず、保冷バッグや保冷剤を利用して早めに冷蔵庫へ入れます。
ステーキ用と焼肉用を使い分ける
同じミスジでも、厚切りのステーキ用と薄切りの焼肉用では筋の感じ方が違います。
薄切りで筋を短く断ってあれば、中央の筋が多少入っていても食べやすいことがあります。
厚切りステーキは肉らしい食べ応えがありますが、太い筋も一口の中へまとまって入ります。
噛む力が弱い人や子どもと一緒に食べる場合は、薄切りのミスジや、あらかじめ筋を外した商品を選ぶ方法もあります。
「ミスジなら厚切りでなければならない」と考える必要はありません。
食べる人に合った厚さを選ぶことが、最後までおいしく食べるためには大切です。
ミスジの筋を気にせず食べる下処理と焼き方

ミスジをおいしく焼くポイントは、太い筋をフライパンの中でやわらかくしようとしないことです。
筋の状態を見て、焼く前に切る、切り分ける、取り除くという判断をします。
そのうえで赤身を焼きすぎないようにすれば、ミスジらしい肉の味とやわらかさを楽しめます。
焼く前に筋の厚さを確認する
パックから肉を取り出したら、最初に中央の筋を確認します。
白い部分が細く、包丁の先で簡単に切れそうなら、数か所筋切りをすれば十分です。
白い部分が厚く、触ると板のような抵抗がある場合は、左右の赤身を切り分けることも考えます。
肉の表面にドリップが付いている場合は、キッチンペーパーで軽く押さえてください。
強く押して水分を絞る必要はありません。表面に見える水分を取るだけで十分です。
生肉を水で洗うと、水しぶきによってシンクや周囲へ汚れが広がる可能性があります。洗わずに、キッチンペーパーで表面を整えます。
生肉を触った手、包丁、まな板はよく洗い、生肉用のトングと焼けた肉を取る箸も分けましょう。
細い筋は包丁で数か所切る
中央の筋が細い場合は、筋と直角になるように包丁を入れます。
一か所だけではなく、肉の大きさに合わせて数か所切り込みを入れてください。
長い筋を短く分断することが目的です。
筋だけを狙って切ればよく、赤身を深く切り離す必要はありません。
肉の周囲に筋膜が残っている場合は、そちらにも数か所切り込みを入れます。周囲の筋が縮むと、焼いている途中で肉が反り返る原因になります。
包丁で切りにくい場合は、清潔なキッチンばさみを使っても構いません。
太い筋は左右の赤身を切り分ける
中央の筋が厚い場合、筋切りを何か所入れても、白い部分そのものは残ります。
食べやすさを優先するなら、筋に沿って包丁を入れ、左右の赤身を切り分けてください。
大きな一枚のステーキではなくなりますが、小さな二枚のステーキとして焼けます。
小さくなる分、火の通りは早くなります。大きな一枚を焼くときと同じ時間加熱しないようにしてください。
取り除いた筋に赤身が多く付いている場合は、細かく切って煮込み料理へ回す方法があります。
ただし、少量の筋を使い切るために、その日のステーキを台無しにする必要はありません。無理にフライパンへ入れず、使わないという判断もありです。
塩こしょうは焼く直前にする
家庭でシンプルに焼くなら、塩こしょうは焼く直前にします。
早い段階で塩を振り、長時間そのままにすると、肉の表面へ水分が出ることがあります。
水分が付いたままフライパンへ置くと、香ばしい焼き色が付きにくくなります。
味付けされたミスジを使う場合は、肉に付いた大量のタレをフライパンへ流し込まないようにしてください。
甘いタレは焦げやすく、肉へ火が通る前にフライパンが黒くなることがあります。
ニンニク、果物、タマネギなどを使ったタレもおいしいのですが、短時間漬け込んだだけで太い筋が完全にやわらかくなるわけではありません。
タレだけに頼らず、筋切りや切り分けを先に行うことが大切です。
フライパンを予熱して肉を詰め込まない
フライパンは、肉を置く前に予熱します。
肉を置いたときに「ジュッ」と音がする状態が一つの目安です。
ただし、煙が大量に出るほど加熱する必要はありません。使用するフライパンや油の種類に合わせて火力を調整してください。
脂が適度に入ったミスジなら、油は少量で構いません。フライパン全体に薄くなじませます。
複数枚を焼く場合でも、肉同士を重ねたり、隙間なく詰め込んだりしないようにしてください。
冷たい肉を一度に大量に入れると、フライパンの温度が下がります。肉汁が流れ出し、焼くというより煮るような状態になります。
フライパンが小さい場合は、二回に分けて焼いたほうがきれいに仕上がります。
何度も動かさず焼き色を付ける
肉をフライパンへ置いた直後は、何度も持ち上げたり動かしたりしないようにします。
表面へ香ばしい焼き色が付いてから裏返します。
ただし、ミスジの厚さや大きさ、フライパンの材質、火力によって必要な時間は変わります。
「片面を必ず何分焼く」と一律には決められません。
薄い肉と厚い肉を同じ時間焼けば、どちらかが焼きすぎるか、加熱不足になります。
肉の側面の色、表面の焼き色、厚さを見ながら調整してください。必要に応じて食品用温度計を使うと、中心の状態を確認しやすくなります。
安全のため、使用した商品の表示や家庭での衛生状態に合わせ、中心まで適切に加熱してください。
筋をやわらかくしようとして焼きすぎない
ミスジの赤身が硬くなる大きな原因の一つが、焼きすぎです。
中央の筋が白く残っていると、「まだ火が通っていない」と感じることがあります。
しかし、筋は赤身と同じように色が変わるとは限りません。
赤身へ十分に火が通っていても、中央の筋は白いまま残ることがあります。
その白さだけを見て加熱を続けると、赤身から水分が抜けてしまいます。
太い筋は、フライパンで長く焼いて解決するより、焼く前に切り分けたほうが確実です。
筋のために赤身全体を焼きすぎないことが、ミスジをおいしく食べる重要なポイントです。
焼いた後は数分休ませる
焼き上がったミスジは、すぐに細かく切り分けず、清潔な皿へ移して数分休ませます。
フライパンの上へ置いたまま休ませると、余熱が入り続けます。火から外した皿へ移してください。
特に薄いミスジは余熱でも火が入りやすいため、焼きすぎに注意します。
休ませた後、中央の筋を避けながら赤身を切り分けます。
大きな一枚のままかぶりつくより、食べる前に一口大へ切ったほうが、筋の場所を確認しやすくなります。
筋繊維を断つ方向へ薄く切る
焼けたミスジが少し硬いと感じたら、筋繊維を断つ方向へ薄く切ってください。
筋繊維に沿って長く切ると、一口の中に長い繊維が残り、噛み切りにくくなります。
肉の表面に見える細い線の方向を確認し、その線と直角になるように包丁を入れます。
中央の太い筋も一緒に長く残さず、一口の中へ入る筋が短くなるように切ります。
同じ肉でも、厚切りのまま食べる場合と、繊維を断って薄く切る場合では食感が変わります。
筋切りをしても赤身がパサパサになる場合は、焼きすぎている可能性があります。
赤身肉を焼くときの考え方については、牛ももステーキがパサパサになる3つの原因|サーロインと同じ焼き方ではダメですも参考にしてください。
ミスジが硬かったときの対処法とおすすめ料理

下処理をせずにミスジを焼き、食べてから硬さに気づくこともあります。
その場合でも、すぐに失敗と決める必要はありません。
切り方を変えたり、別の料理へ使ったりすれば、最後までおいしく食べられます。
焼いた後に硬いと気づいたら薄く切る
焼き上がったミスジが硬い場合は、最初に中央の筋を確認します。
筋だけが硬いなら、白い部分を外し、左右の赤身を薄く切ります。
赤身全体に歯応えがある場合も、筋繊維を断つ方向へ薄く切り直すと食べやすくなります。
一口大に切ったミスジは、サラダ、サンドイッチ、ガーリックライス、チャーハンなどへ使えます。
大きなステーキのまま食べるより、料理全体へ少量ずつ散らしたほうが硬さを感じにくくなります。
温め直すときは、長時間加熱しないでください。すでに焼けている赤身を何度も加熱すると、さらに水分が抜けます。
生のミスジなら細切り炒めに変更できる
焼く前に筋が太いことへ気づいたら、ステーキではなく細切り炒めへ変更する方法があります。
中央の太い筋を外し、赤身を筋繊維と直角になるように細く切ります。
ピーマンやタケノコと合わせれば青椒肉絲風にできますし、タマネギと炒めて焼肉丼にもできます。
細切りにすれば、一口の中へ入る筋繊維が短くなります。
ただし、細く切った肉は火が通りやすいため、炒めすぎないようにしてください。
野菜へ火を通してから肉を加える、または肉を一度取り出して最後に戻す方法もあります。
筋の太い部分は煮込み料理に使う
ステーキ用として買ったミスジでも、中央の筋が非常に太ければ、煮込み料理へ変更して構いません。
カレー、シチュー、トマト煮など、水分のある料理で時間をかけて加熱する方法があります。
ただし、ミスジの赤身部分は、長く煮れば必ずジューシーになるわけではありません。小さく切りすぎたり、強火で煮立て続けたりすると、赤身がパサつくことがあります。
筋の太い部分と赤身部分を分け、筋は長めに、赤身は料理に合わせて加熱時間を調整するとよいでしょう。
ステーキとしての見た目にこだわって硬いまま食べるより、肉の状態に合わせて料理を変えたほうが満足できることがあります。
同じパックの肉は一枚ずつ焼き時間を変える
複数枚のミスジを焼くときは、すべて同時に取り出す必要はありません。
薄い肉や小さな肉から先に火が通ります。焼けたものから順番に清潔な皿へ移します。
厚い肉だけ火力を調整しながら、中心まで適切に加熱してください。
中央の筋が太い肉は、焼く前に小さく切り分けておくと火の通りが変わります。
家族で食べる場合は、筋の細い肉を子どもや噛む力が弱い人へ分けるのも一つの方法です。
同じパックだから同じ時間で焼くのではなく、一枚ずつ状態を見ることが失敗を減らします。
高価なミスジでも筋が硬いことはある
国産牛やブランド牛、高い等級のミスジであっても、中央に筋はあります。
値段が高ければ、サシの入り方や赤身の口当たりに違いを感じることはあります。しかし、筋の構造そのものがなくなるわけではありません。
高価なミスジの筋が硬かったからといって、必ずしも肉の品質が悪いとはいえません。
大切なのは、価格だけで判断せず、筋の太さに合った下処理をすることです。
私も自宅用にミスジを買うなら、サシの多さだけでは選びません。
中央の筋、肉の厚さ、食べる人数、料理方法を見て、家庭で扱いやすいパックを選びます。
見た目が最も豪華なパックより、最後まで食べやすいパックのほうが、結果的に満足できることが多いからです。
筋を飲み込んでも大丈夫?
適切に加熱されたミスジの筋であれば、食べても問題ありません。
ただし、硬くて何度噛んでも小さくならない場合は、無理に飲み込まないでください。
大きな塊のまま飲み込めば、喉へ詰まらせる危険があります。
特に子ども、高齢者、噛む力が弱い人へ出す場合は、焼く前に太い筋を外し、食べやすい大きさに切りましょう。
「食べられる部位だから残してはいけない」と考える必要はありません。
安全に、おいしく食べられる部分を楽しむことが一番です。
まとめ|ミスジの筋は食べられるが太さに合わせた下処理が必要

ミスジステーキの真ん中にある白い筋は、牛肉にもともと付いている筋や腱です。
異物ではなく、適切に加熱すれば食べられます。
ただし、食べられることと、ステーキの短時間加熱でやわらかくなることは別です。
筋が厚い部分は、赤身へ火が通ってもゴムのように残ることがあります。
同じパックのミスジでも硬さが違う主な理由は、次のとおりです。
- 切り出された位置によって中央の筋の太さが違う
- 筋の中心を通る肉と端を通る肉がある
- 一枚ずつ肉の厚さや筋繊維の向きが違う
- サシの量や肉質に個体差がある
- 解凍状態や焼き時間によって赤身の硬さが変わる
スーパーで選ぶときは、サシや値段だけでなく、中央の白い筋と肉の厚さを確認してください。
筋が細ければ数か所へ切り込みを入れ、筋が厚ければ左右の赤身を切り分けます。
太い筋をやわらかくしようとして長時間焼くと、周りの赤身が先に硬くなります。筋は焼く前に処理し、赤身を焼きすぎないことが大切です。
焼いた後に硬いと気づいた場合は、中央の筋を外し、筋繊維を断つ方向へ薄く切ります。生の状態で筋が太いと分かった場合は、細切り炒めや煮込み料理へ変更してもよいでしょう。
私は精肉の仕事を約25年続けてきましたが、ミスジを「筋があるから悪い肉」だとは考えていません。
赤身の味が濃く、適切に焼けばステーキや焼肉でおいしく食べられる部位です。
一方で、どの一枚も同じようにやわらかいわけではありません。
中央の筋を見て、切る、外す、料理を変える。このひと手間を加えるだけで、同じミスジでも食べやすさは大きく変わります。


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