スーパーで買った牛切り落としを炒めたら、ゴムのように固くなってしまった。見た目は脂が入っていて柔らかそうだったのに、噛んでもなかなか切れない。
そんな経験はないでしょうか。
特に判断に迷いやすいのが、牛肉に付いている白い部分です。
「白い部分が多いから、脂があって柔らかそう」
そう思って選んだのに、実際に食べてみると、口の中に白くて固い部分が残ることがあります。その正体は、脂ではなくスジや筋膜だったのかもしれません。
私は食品スーパー5社の精肉部門で、約25年間働いてきました。牛肉を整形し、スライスし、何千、何万というパックを商品化するなかで、同じように見える白い部分にも違いがあることを実感してきました。
脂は加熱すると溶けやすく、肉のコクやジューシーさにつながります。一方、太いスジや筋膜は、炒め物のような短時間加熱では柔らかくなりにくく、ゴムのような食感が残る場合があります。
ただし、牛切り落としが固くなる原因は、スジだけではありません。
使用されている部位、肉の厚さ、切り方、フライパンへ入れる量、加熱時間なども食感に影響します。柔らかそうな肉を選べても、炒め方によっては固くなります。
この記事では、牛切り落としの白い部分が脂なのかスジなのかを見分ける方法、スーパーでの選び方、ゴムのように固くしない炒め方、固い肉を買ってしまったときの対処法まで詳しく解説します。
牛切り落としがゴムみたいに固くなるのはなぜ?

牛切り落としが固くなったとき、「安い肉を買ったから仕方がない」と考える人は多いかもしれません。
しかし、値段だけで肉の柔らかさが決まるわけではありません。
比較的高い切り落としでも、太いスジが残っていたり、加熱しすぎたりすれば固くなります。反対に、手頃な牛切り落としでも、肉の状態を見て短時間で炒めれば、柔らかく仕上げられます。
まずは、牛切り落としがゴムのように感じる主な原因を整理してみましょう。
固さの原因は「肉質」だけではない
肉の柔らかさには、次のような要素が関係します。
- 使われている部位
- スジや筋膜の量
- 肉の厚さ
- 肉の繊維の向き
- 脂の入り方
- 加熱温度
- 加熱時間
- フライパンへ入れる肉の量
同じ部位でも、薄く切られた肉と厚く切られた肉では食感が異なります。
脂が少ない赤身肉でも、薄く切られ、太いスジが少なければ食べやすく仕上がります。一方、脂が多く見える肉でも、肉を横切る太いスジが残っていれば、噛み切りにくく感じることがあります。
私も精肉売場で、お客様から「昨日買った切り落としは柔らかかったのに、今日の肉は固かった」と相談されたことが何度もあります。
話を聞いてみると、同じ商品名でも使われていた部位が違ったり、料理や加熱時間が違ったりすることがありました。
「牛切り落とし」という商品名だけでは、中身や食感を完全には判断できないのです。
切り落としには複数の部位が混ざることがある
一般的に切り落としは、牛肉をスライスしたときに出る、形や大きさがそろわない部分を商品化したものです。
たとえば、肩ロースを使って作られた商品なら「牛肩ロース切り落とし」、モモなら「牛もも切り落とし」と表示されることがあります。
部位が表示されていれば、肉の特徴をある程度予想できます。
しかし、商品名が単に「牛切り落とし」となっている場合は、複数の部位が入っている可能性があります。
肩、モモ、バラなど、食感の違う肉が一つのパックに入ることもあります。そのため、同じパックの中でも、柔らかい一枚と噛み応えのある一枚が混ざることがあるのです。
切り落としの作り方や商品名の付け方は、すべてのスーパーで統一されているわけではありません。
私は複数のスーパーで勤務してきましたが、単一部位で切り落としを作る企業もあれば、複数の部位を組み合わせる企業もありました。
同じ店でも、加工する原料や時間帯によって、パックに入る肉の構成が変わることがあります。
太いスジや筋膜は短時間炒めても柔らかくなりにくい
普段「スジ」と呼ばれている白い部分には、腱や結合組織、肉の表面を覆う筋膜などが含まれます。
細かなスジであれば、薄切りにすることで気になりにくくなる場合があります。しかし、太く強いスジや膜状の組織は、短時間炒めただけでは柔らかくなりません。
加熱すると縮み、白く目立つこともあります。
赤身部分は噛み切れるのに、白い部分だけが口の中へ残る場合は、脂ではなくスジや筋膜だった可能性があります。
スジに含まれるコラーゲンは、十分な水分と時間をかけて加熱することで柔らかくなる場合があります。ただし、薄切り肉を長く炒めればよいわけではありません。
フライパンで水分を飛ばしながら加熱すると、スジが柔らかくなる前に赤身部分の水分が抜けてしまいます。
その結果、赤身もスジも固く感じる状態になります。
赤身肉は加熱しすぎると水分が抜ける
「ゴムみたい」という食感は、スジだけでなく、赤身の加熱しすぎによって生じることもあります。
牛モモなどの脂が少ない部位は、さっぱりとして食べやすい反面、加熱しすぎると水分が抜けやすい部位です。
薄い切り落としは、火が通るまでにそれほど時間がかかりません。
それでも、野菜へ火が通るまで肉を炒め続けたり、タレを入れてから何分も煮詰めたりすると、肉が強く縮みます。
この固さは、白いスジを噛んだときの「噛み切れない固さ」とは少し違います。赤身全体が締まり、パサつきながら弾力が強くなるような食感です。
食べたときに白い部分だけが残るならスジを疑い、肉全体が縮んで固いなら加熱しすぎも疑ってみてください。
白い部分は脂?スジ?精肉担当が見ている違い

牛肉の白い部分を見分けるとき、色だけで判断するのは難しいものです。
脂もスジも筋膜も、売場の照明や包装フィルム越しには白く見えます。
精肉担当者が見るのは、白さだけではありません。形、入り方、太さ、透明感、肉とのつながり方などをまとめて確認します。
完全に見分けられない場合もありますが、特徴を知っておけば、固いパックを避けやすくなります。
脂は不規則な形で広がり、加熱すると溶けやすい
脂は、肉の端に塊として付いていたり、赤身と赤身の間へ不規則に入っていたりします。
肉の中へ細かな白い点や線として入る脂は、一般に「サシ」や「霜降り」と呼ばれるものです。加熱すると溶けやすく、コクやジューシーさにつながります。
切り落としで柔らかさを重視するなら、大きな脂の塊が付いた肉より、赤身の中へ細かな脂が入っている肉のほうが選びやすいでしょう。
ただし、白い部分が脂だからといって、多ければ多いほどよいわけではありません。
肉の端に大きな脂の塊が付いているパックは、加熱後に脂が大量に出ることがあります。購入した重量のわりに、食べられる赤身部分が少なく感じることもあります。
細かな脂は柔らかさにつながりやすい一方、大きな脂の塊は料理を油っぽくすることがあります。
スジは線や帯のように肉を横切っている
スジは、肉の中を一定方向へ伸びる白い線や、帯のように見えることがあります。
特に注意したいのは、赤身を横切るように、太くはっきりと入っている白い線です。
脂にも線のように見えるものはありますが、スジは幅が比較的一定で、肉の端から端へつながっているように見えることがあります。
複数の肉に同じような太い線が入っているパックは、特定の位置に強い結合組織がある部位から作られた可能性があります。
短時間で仕上げる炒め物では、このようなスジが口に残りやすくなります。
売場では包装フィルム越しに見るため、細かな違いまでは分かりません。それでも、白い部分が丸みのある塊なのか、肉を横断する細長い線なのかを見るだけで、判断しやすくなります。
筋膜は半透明の薄いフィルムのように見える
筋膜は、肉の表面を覆う薄い膜のような組織です。
白色だけでなく、半透明、銀色、少し光沢のある膜のように見える場合があります。精肉の加工現場では、このような膜を取り除いたり、料理に影響しない程度まで薄く整形したりします。
ただし、切り落としは形のそろわない部分を商品化するため、筋膜が付いた肉が一部に入ることがあります。
筋膜が強く付いた肉は、加熱すると膜が縮みます。
肉が反ったり、丸まったりするだけでなく、噛んだときに薄いゴムのような抵抗を感じることがあります。
大きな肉の表面に、白く光る薄い膜が広く張り付いている場合は、脂ではなく筋膜の可能性があります。
購入後は指で触った感触も確認できる
パックを開けた後なら、見た目だけでなく感触でも判断できます。
脂は比較的やわらかく、指で押すと形が変わりやすい部分です。室温や手の温度で少しべたつきを感じることもあります。
一方、太いスジは弾力があり、指で押しても形が変わりにくい傾向があります。引っ張ると伸びるように感じても、簡単には切れません。
筋膜は薄くても丈夫で、肉の表面からはがそうとすると、膜状につながることがあります。
生肉を触った後は、手や使用した器具を石けんでよく洗ってください。肉を水で洗う必要はありません。水しぶきによって周囲へ汚れが広がることがあるため、表面の水分やドリップはキッチンペーパーで軽く押さえます。
加熱すると違いが分かりやすくなる
脂は加熱すると透明感が出て、徐々に溶けます。フライパンに油として流れ出し、白い塊が小さくなることもあります。
スジや筋膜は、加熱しても油のようには溶けません。
むしろ白さが強くなり、縮んで硬く感じることがあります。
炒めた肉の中に、白く細長い部分がそのまま残っている場合は、スジや筋膜の可能性が高いでしょう。
ただし、家庭で白い部分を一つずつ完全に分類する必要はありません。
重要なのは、短時間加熱で溶けそうな脂なのか、形が残りそうな太い線や膜なのかを大まかに見分けることです。
迷う白い部分があれば、炒める前に数か所へ包丁を入れておくだけでも、食べやすさは変わります。
スーパーで柔らかい牛切り落としを選ぶ7つのポイント

柔らかい牛切り落としを選ぶときは、白い部分だけを見ても十分ではありません。
部位、厚さ、肉の大きさ、ドリップなども確認します。
精肉売場で私がパックを選ぶとしたら、次の7点を見ます。
1.肩ロース・バラ・モモなどの部位表示を見る
最初に確認するのは商品ラベルです。
「牛切り落とし」という表示だけでなく、「肩ロース」「バラ」「モモ」などの部位名が書かれていないか見てください。
柔らかさと赤身、脂のバランスを求めるなら、肩ロース切り落としは選びやすい商品です。適度に脂が入り、炒め物や牛丼など幅広い料理に使えます。
バラ切り落としは脂が多く、柔らかく感じやすい一方で、料理が重くなることがあります。
モモ切り落としは赤身が中心で、さっぱり食べたい人に向いています。ただし、加熱しすぎるとパサつきやすいため、短時間で仕上げる必要があります。
部位名が分かれば、肉の性質と適した調理方法を予想しやすくなります。
2.太く白い線が何本も入った肉を避ける
パックを正面から見て、赤身を横切る太い白い線が多くないか確認します。
細かな白い線がすべてスジとは限りません。細かな脂が入っていることもあります。
注意したいのは、同じような太さの白い線が、複数の肉を端から端まで横切っているパックです。
一枚だけなら、家でその部分を切り取ったり、切り込みを入れたりできます。しかし、ほとんどの肉に太いスジが見える場合は、下処理の手間が増えます。
炒め物にすぐ使いたいなら、太い線が少ないパックを選ぶほうが安心です。
3.肉の厚さがそろったパックを選ぶ
牛切り落としは形が不ぞろいな商品ですが、厚さまで極端に違うと調理が難しくなります。
薄い肉はすぐに火が通ります。一方、折り重なった厚い部分や、スライスの端にある厚い肉は、中心まで火が通るのに時間がかかります。
厚い肉へ火を通そうとして炒め続けると、先に火が通った薄い肉が固くなります。
パックを上から見るだけでなく、可能なら横からも確認してください。
肉が強く折り重なり、大きな塊のようになっていないかを見るためです。
完全に同じ厚さである必要はありません。極端に厚い部分が少なく、全体がおおむね同じ厚さに見える商品なら、家庭でも扱いやすくなります。
4.白い部分の「量」より「入り方」を見る
白い部分が多い肉を見ると、「脂が多いから柔らかそう」と思うかもしれません。
しかし、本当に確認したいのは、白い部分の量ではなく入り方です。
赤身の中へ細かく枝分かれするように入っているなら、脂である可能性があります。肉の外側に丸みのある白い塊として付いているものも、多くは脂です。
一方、赤身を一直線に横切る白い帯や、表面に張り付く半透明の膜は、スジや筋膜の可能性があります。
「白いものが多いか少ないか」だけではなく、「どのような形で、どこに入っているか」を見てください。
5.赤身と脂のバランスを確認する
柔らかさを求めるなら、ある程度の脂は役立ちます。
しかし、パック全体が白く見えるほど脂が多い商品は、炒めたときに大量の脂が出る場合があります。
私が選ぶなら、赤身の中へ細かな脂が入りつつ、肉の端に付いた大きな脂の塊が多すぎないものを探します。
牛肉らしいコクを求めるなら脂のある肉、さっぱり食べたいなら赤身の多い肉というように、料理や好みに合わせて選ぶことも大切です。
脂が少ない肉でも、厚さがそろい、スジが少なければ、短時間調理で食べやすく仕上がります。
6.ドリップが少なく、肉が潰れていないものを選ぶ
トレーの底に赤い液体が多くたまっていないか確認しましょう。
この液体は一般にドリップと呼ばれます。すべてが血液というわけではなく、肉から出た水分などが混ざったものです。
ドリップが多い肉は、フライパンへ入れたときにも水分が出やすくなります。
フライパンの温度が下がり、肉を焼くというより、出てきた水分で煮るような状態になりがちです。
また、トレーへ肉が強く押し込まれ、潰れて固まっている商品も注意が必要です。
肉が固まったままフライパンへ入ると、外側だけが先に焼け、内側へなかなか火が入りません。内側を加熱している間に、外側の肉が固くなります。
ふんわりと盛り付けられ、肉を一枚ずつほぐしやすそうなパックを選ぶと調理が楽になります。
7.トレーの横と底も確認する
パックの表面には、大きく見栄えのよい肉が並んでいることがあります。
商品をきれいに見せるための盛り付けとして、表面を整えること自体は不自然ではありません。
ただし、トレーの底に細かな肉、厚い端材、大きな脂、スジの多い部分が偏っている場合があります。
パックをひっくり返したり、指で強く押したりする必要はありません。透明なトレーであれば、横や底から軽く確認できます。
表面と底で、肉の大きさや脂の量に極端な違いがないパックが使いやすいでしょう。
表面だけを見て「当たり」と判断せず、数秒だけ角度を変えて見ることをおすすめします。
牛切り落としを固くする間違った炒め方

柔らかそうな切り落としを選んでも、炒め方を間違えると固くなります。
特に多いのが、肉へ火を通そうとして、必要以上に長く炒めてしまうケースです。
薄切り肉は、思っているよりも早く火が通ります。
ここでは、牛切り落としをゴムのようにしやすい炒め方を確認しましょう。
冷たい肉を固まったままフライパンへ入れる
パックから出した牛切り落としは、肉同士が重なっています。
そのままフライパンへ入れると、熱いフライパンに触れている外側だけが先に焼け、重なった内側には火が入りません。
菜箸で肉の塊をほぐしている間にも、外側の肉は加熱され続けます。
ようやく内側へ火が通るころには、最初にフライパンへ触れた肉が固くなっています。
肉は調理前にパックから出し、無理のない範囲で軽く広げてください。完全に一枚ずつ並べる必要はありませんが、大きな塊をなくしておくだけで火の通り方が変わります。
フライパンへ肉を一度に詰め込む
家族分の肉を一度に仕上げようとして、フライパンいっぱいに牛肉を入れていないでしょうか。
肉を大量に入れると、フライパンの温度が急に下がります。
肉から出た水分が蒸発しきれず、フライパンの底にたまります。すると、表面へ焼き色が付かず、水分の中で肉を加熱するような状態になります。
水分がなくなるまで炒め続ければ、肉はすでに加熱しすぎです。
肉の量が多い場合は、2回に分けて炒めましょう。
一度に入れる量を減らすと、短時間で火が通ります。2回に分けても、それほど長い調理時間にはなりません。
肉と野菜を最初から最後まで一緒に炒める
牛肉と野菜を同時にフライパンへ入れ、野菜が柔らかくなるまで炒め続ける方法も、肉を固くしやすくなります。
タマネギ、ニンジン、ピーマン、キャベツなどは、肉より火が通るまで時間がかかる場合があります。
野菜に合わせて加熱すると、薄い牛切り落としは火が入りすぎます。
おすすめは、肉と野菜を分けて炒める方法です。
肉へ短時間で火を通して一度取り出し、その後で野菜を炒めます。野菜が仕上がったところで肉を戻せば、肉の加熱時間を短くできます。
洗い物を増やしたくない場合も、取り出した肉は同じ皿へ一時的に置けば十分です。ただし、生肉を置いていた皿は使わず、清潔な皿を用意してください。
タレを早く入れて長時間煮詰める
しょうゆや砂糖を含むタレは、肉へ味を付ける一方、早く入れすぎると焦げやすくなります。
水分の多いタレを加えると、フライパンの温度も下がります。
「肉に味をしっかり染み込ませたい」と考えて長く煮詰めると、薄い肉から水分が抜け、固くなります。
炒め物のタレは、肉と野菜へ火が通る直前、または肉をフライパンへ戻した後に加えるのがおすすめです。
タレを入れた後は、全体へ絡めながら短時間で仕上げます。
味を染み込ませることより、表面へ味をまとわせる感覚で十分です。
「念のため」と火を通しすぎる
牛肉の色が変わった後も、「まだ生かもしれない」と不安になり、何分も炒め続けることがあります。
安全のために中心まで火を通すことは大切です。しかし、薄い切り落としは、色が変わった後も余熱で火が進みます。
加熱不足を避けながら、必要以上に炒め続けないことがポイントです。
厚い肉や強く折り重なった肉が混ざっている場合は、その肉だけ先に入れる方法もあります。
すべての肉を同じ時間炒めるのではなく、厚さに合わせてフライパンへ入れるタイミングを変えると、仕上がりが安定します。
ゴムみたいにしない下処理と炒める順番

牛切り落としを柔らかく仕上げるために、特別な調味料は必須ではありません。
大切なのは、肉の状態を確認し、厚さをある程度そろえ、加熱時間を短くすることです。
ここからは、家庭で実践しやすい下処理と炒める順番を説明します。
まず肉を広げて厚さとスジを確認する
パックから肉を出したら、フライパンへ直接入れず、バットや清潔な皿の上で軽く広げます。
確認するのは次の点です。
- 極端に厚い肉がないか
- 太い白いスジがないか
- 表面を覆う筋膜がないか
- 大きすぎる肉がないか
- 肉同士が強く重なっていないか
- ドリップが多く付いていないか
牛切り落としを一枚ずつ完璧に広げる必要はありません。
明らかに厚い部分、白いスジが目立つ部分、大きく折り重なった部分だけを確認すれば十分です。
精肉の仕事でも、肉質を見ずに機械的に同じ処理をするのではなく、原料の状態を見て整形方法を変えます。家庭でも、調理前に数十秒確認するだけで、失敗を減らせます。
太いスジは切り取り、筋膜には切り込みを入れる
肉の端に太いスジが付いていて、簡単に取り除けそうなら、包丁で切り取ります。
すべてのスジを取り除く必要はありません。薄い肉から無理にはがそうとすると、食べられる赤身まで小さくなってしまいます。
取り除きにくいスジには、数か所へ包丁を入れます。
白い線を断つように切ると、一口の中で長いスジを噛み続ける状態を減らせます。
筋膜が広く付いている肉も、膜へ数か所の切り込みを入れてください。加熱したときに縮んで肉全体が反るのを抑えやすくなります。
太いスジが多い肉は、そのまま大きく使うより、スジを断つ方向へ細切りにしたほうが食べやすくなります。
大きな肉と厚い肉を食べやすく切る
切り落としの魅力は、整ったスライス肉より手頃な価格で買いやすいことです。
形が不ぞろいなのは、商品の性質でもあります。
すべてを同じ形へ切りそろえる必要はありませんが、極端に大きな肉は食べやすい大きさへ切ります。
厚い部分も、そのままでは火が通りにくいため、半分程度に切っておくとよいでしょう。
細かな肉は後からフライパンへ入れ、大きな肉や厚い肉を先に入れる方法もあります。
肉の大きさと厚さをある程度そろえると、フライパンの中で火の通り方を管理しやすくなります。
片栗粉を薄くまぶして水分を守る
赤身が多い牛切り落としや、少し固そうな肉には、片栗粉を薄くまぶす方法があります。
片栗粉が肉の表面を覆うことで、加熱中に水分が外へ出るのを抑えやすくなります。タレにも適度なとろみが付き、肉へ味が絡みます。
ポイントは、片栗粉を付けすぎないことです。
粉が多いと肉同士がくっつき、フライパンの底へ膜のように広がります。タレも必要以上にどろどろになります。
肉全体へ薄く付く程度で十分です。
ポリ袋へ肉と少量の片栗粉を入れ、やさしく振ると均一にまぶしやすくなります。余分な粉は軽く落としてからフライパンへ入れてください。
片栗粉を付けた肉は焦げ付きやすいため、適量の油を使い、火加減を調整します。
肉と野菜は分けて炒める
牛切り落としを柔らかく仕上げるなら、肉と野菜を別々に炒める方法が失敗しにくいでしょう。
最初にフライパンを温め、油を入れます。肉を一度に詰め込まず、広げられる程度の量を入れてください。
肉の色が変わり、中心まで火が通る少し手前で、いったん清潔な皿へ取り出します。
次に野菜を炒めます。
火の通りにくい野菜から入れ、好みの状態まで加熱してください。野菜がほぼ仕上がったら、取り出しておいた肉を戻します。
最後にタレを加え、全体へ絡めながら仕上げます。
この方法なら、野菜へ火が通るまで肉を炒め続けずに済みます。
タレは最後に入れて短時間で絡める
タレは、肉を柔らかくするために長く煮込むものではありません。
薄切りの牛肉では、タレを入れた後に加熱しすぎないことのほうが重要です。
肉と野菜がほぼ仕上がったところでタレを加え、全体へ行き渡ったら火を止めます。
片栗粉をまぶした肉なら、短時間でもタレが絡みやすくなります。
甘辛いタレは冷めても味を感じやすいため、煮詰めすぎなくても十分に満足できます。
濃い味にしたい場合も、長く加熱するのではなく、タレの配合を調整してください。
柔らかく炒める基本の手順
牛切り落としを固くしにくい基本の手順をまとめます。
- パックから肉を出して軽く広げる
- 太いスジや筋膜を確認する
- 取り除けるスジは切り取る
- 筋膜や残ったスジには切り込みを入れる
- 厚い肉と大きな肉を食べやすく切る
- 必要なら片栗粉を薄くまぶす
- 肉をフライパンへ詰め込まず、短時間で炒める
- 肉を一度取り出す
- 野菜を炒める
- 肉を戻してタレを短時間で絡める
この手順で特に重要なのは、肉を広げること、一度に入れすぎないこと、野菜と分けて炒めることです。
酒や砂糖などへ長時間漬け込まなくても、加熱時間を管理するだけで食感は変わります。
固い牛切り落としを買ってしまったときの救済方法

売場でしっかり選んだつもりでも、パックを開けてから太いスジや大量の脂に気づくことがあります。
そんなときも、すぐに「ハズレだった」と諦める必要はありません。
肉の状態に合わせて切り方や料理を変更すれば、おいしく食べ切れます。
太いスジが多い肉は細切りにする
大きなままでは噛み切りにくい肉も、細く切れば食べやすくなります。
白いスジが伸びている方向を確認し、そのスジを短く断ち切るように包丁を入れます。
スジと同じ方向に細く切ると、長いスジが残る場合があります。できる範囲で、白い線を横切る方向に切ってください。
細切りにした肉は、ピーマンやタケノコと合わせた青椒肉絲風の炒め物に向いています。
片栗粉を薄くまぶし、肉だけを短時間で炒めて取り出すと、食べやすく仕上がります。
細かな肉はそぼろやチャーハンに使う
パックの底に細かな肉ばかり入っていた場合は、大きな肉料理を作ろうとしないことも大切です。
包丁でさらに粗く刻めば、牛そぼろ、チャーハン、オムレツ、カレーなどに使えます。
細かな肉には、火が通りやすく、調味料が絡みやすいという長所があります。
甘辛く炒めてご飯にのせたり、卵でとじたりすれば、肉の形が不ぞろいでも気になりません。
牛切り落としは、きれいな一枚肉として使うことだけが正解ではありません。パックの状態に料理を合わせると、無駄なく使い切れます。
赤身が多い肉には片栗粉と短時間加熱を使う
赤身ばかりで脂がほとんどない切り落としは、長く炒めず、片栗粉を利用します。
肉へ下味を付け、片栗粉を薄くまぶしてから短時間で炒めてください。
赤身の多い肉を柔らかくしようとして、酒や調味料の中で長時間煮ると、かえってパサつく場合があります。
炒め物では、スジを処理し、水分を逃がしにくくして、加熱時間を短くすることを優先します。
肉じゃがやハヤシライスなどに使う場合も、肉を最初から最後まで煮続けず、一度取り出して仕上げに戻す方法があります。
脂が多い肉は炒め油を減らす
パックを開けたら、大きな脂が予想以上に多かったという場合もあります。
そのような肉を炒めるときは、最初に使う油を減らすか、油を使わずに調理します。
冷たいフライパンへ脂の多い部分を入れ、弱めの火で加熱すると、脂が少しずつ出てきます。その脂を使って、残りの肉や野菜を炒められます。
脂が大量に出たら、キッチンペーパーで一部を拭き取ってください。
すべて取り除く必要はありません。牛脂には牛肉らしい香りとコクがあります。
牛丼、カレー、肉じゃがなど、脂のうま味を料理全体へ広げられるメニューに変更するのもよい方法です。
煮込めば必ず柔らかくなるわけではない
固い肉を見ると、「長く煮込めば柔らかくなる」と考えるかもしれません。
確かに、スジの多い塊肉は、水分を保ちながら時間をかけて煮込むことで、結合組織が柔らかくなる場合があります。
しかし、薄い牛切り落としは事情が異なります。
太いスジが柔らかくなるまで加熱しようとすると、その前に薄い赤身部分の水分が抜けてしまうことがあります。
「スジが多いから長く炒める」「薄切り肉だから煮汁の中で何十分も煮る」という方法は、必ずしも正解ではありません。
薄切り肉では、太いスジを切り、肉を小さくし、加熱時間を短くするほうが食べやすくなることがあります。
一度の失敗だけで店や商品を決めつけない
同じスーパーの同じ商品でも、毎回まったく同じ部位や肉質とは限りません。
切り落としは、スライス商品を作った後に出る肉の形や量によって、中身が変わることがあります。
肩ロースを多く加工した日は、脂の入った柔らかい端の肉が多く入るかもしれません。モモを多く加工した日は、赤身中心のパックが増えることがあります。
前回のパックが固かったからといって、その店の切り落としがすべて固いとは限りません。
次に購入するときは、商品名だけでなく、部位表示、肉の厚さ、白い部分の形、トレーの底まで確認してみてください。
まとめ|白い部分の形と入り方を見れば固い牛肉を避けやすい

牛切り落としを炒めたときにゴムのように固くなる原因は、スジだけではありません。
使用されている部位、肉の厚さ、繊維の向き、フライパンへ入れる量、加熱時間なども関係します。
白い部分を確認するときは、色だけでなく、形と入り方を見てください。
脂は、肉の端に不規則な塊として付いたり、赤身の中へ細かく入ったりします。加熱すると溶けやすく、肉のコクやジューシーさにつながります。
スジは、白い線や帯のように肉を横切ることがあります。筋膜は、肉の表面を覆う半透明のフィルムのように見える場合があります。
太いスジや筋膜は短時間炒めても残りやすいため、取り除ける部分は切り取り、残った部分には切り込みを入れましょう。
スーパーで牛切り落としを選ぶときは、次の点を確認してください。
- 肩ロース、バラ、モモなどの部位表示
- 太く白い線が何本も入っていないか
- 肉の厚さがある程度そろっているか
- 細かな脂と大きな脂の塊のバランス
- ドリップが多くないか
- 肉が強く潰れていないか
- トレーの底にスジや脂が偏っていないか
調理するときは、肉を重なったままフライパンへ入れないことが大切です。
肉を軽く広げ、厚い部分と太いスジを処理します。必要なら片栗粉を薄くまぶし、フライパンへ詰め込まずに短時間で炒めてください。
肉と野菜を別々に炒め、タレを最後に絡めれば、肉へ火が入りすぎるのを防ぎやすくなります。
私が精肉売場でお客様に切り落としの選び方を聞かれたときも、「白い部分が多いか少ないかだけで決めないでください」とお伝えしてきました。
細かな脂なのか、肉を横切るスジなのか。塊なのか、膜なのか。
売場で数秒見比べ、調理前に肉を広げるだけでも、ゴムのような食感になる失敗は大きく減らせます。


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